バセドウ病の診断は①甲状腺中毒症状があること②TRAb陽性の2点で診断ができる。
本来は放射線ヨードで甲状腺接種率が高値であることで確定診断が必要であるが、検査の出来ない医療機関ではTRAb陽性でバセドウ病とみなして治療を開始している。
エコーでは甲状腺内部血流の増加が見られるのもポイント(エコーでも他の甲状腺中毒症の除外をする)。
なお、甲状腺中毒症状の患者がいても診断がついてなければあわてて抗甲状腺薬を使ってはならない。
・無痛性甲状腺炎(破壊性甲状腺炎)
橋本病に何かしらの原因が加わり、甲状腺が破壊されて血中の甲状腺ホルモンが増加した状態。
慢性甲状腺炎(橋本病)が急性に起こって甲状腺が破壊されているイメージ。
炎症が落ち着くと
通常は1か月程度で甲状腺ホルモンは低下していく。
→甲状腺ホルモンを下げるための抗甲状腺薬の投与は禁忌
診断のポイント:甲状腺中毒+TRAbが陰性(まれながらTRAb陽性の無痛性甲状腺炎がある)。CRPが陰性で圧痛が無いのもポイント。1ヶ月程度で甲状腺値は低下してくる。
また背景に橋本病があるためTgAbやTPOAbが陽性で有ることが多い。
エコーでは内部の血流が減少している(バセドウ病では血流が増加)
フォローアップ:
・亜急性甲状腺炎
風邪などのウィルス感染に引き続いて起こされる病態。女性に圧倒的に多く、40台に多い。
頸部の自発痛や圧痛があるが、痛みが移動することがある(クリーピング現象)。
また炎症により全身性の発熱をきたすこともある。(甲状腺の痛みが軽度の場合不明熱として扱われてしまう)
炎症が落ち着けば自然にホルモンの値は低下していく。
診断のポイント:TRAbが陰性。CRP陽性で甲状腺に圧痛+痛みに一致した炎症像(低エコー像)
★TgAb,TPOAbが陽性の場合は橋本病の急性増悪との鑑別が必要になるが、経過をみて判断するしか無い。橋本病に亜急性甲状腺炎が生じる可能性もある。
フォローアップ:無治療で経過すると約3ヶ月で自然に軽快する疾患。
症状が軽ければ無治療もあり。症状があればNSAIDsで様子見。症状が強い場合はPSL投与を考慮。
PSLは症状を劇的に改善させて炎症改善後の甲状腺機能低下症の頻度を抑えられる。
PSLは15mg/dayから開始。2週間毎に甲状腺ホルモンとCRPを測定しながら5mgずつ漸減して経過を見る。
一過性甲状腺中毒症のあとに一過性甲状腺機能低下症になることがある。
・機能性結節(プランマー病)
TRAb陰性で甲状腺に痛みがない場合に考える。CRPも陰性。多くの場合TgAbやTPOAbも陰性。
甲状腺中毒症状が持続的で結節もあり。シンチグラフィーで確定診断。
フォローアップ:バセドウ病のように寛解に至る可能性が少ない。治療としては放射性ヨード内用療法、手術、抗甲状腺薬。
・橋本病急性増悪
甲状腺中毒症状による症状と炎症が起こる。自発痛や圧痛に加えて全身性の発熱も起こる。
橋本病が背景にあるのでTPOAb,TgAbは陽性になる。CRPも上昇。
エコーでは痛みのある場所は低エコー像を示すが、痛みのない場所は橋本病による粗雑性が見られる。
急性期には甲状腺中毒症状を呈するが、炎症が静まると甲状腺機能低下症となる(そして甲状腺腫が残る)。
治療は亜急性甲状腺炎と同じくステロイドPSL投与。
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