線維筋痛症TIPS

線維筋痛症とは体の広範囲の慢性疼痛とこわばりを主症状とする。随伴症状として倦怠感、疲労、抑うつ、認知機能低下など多彩な随伴症状を呈しうる。原因は手術などの強い身体的ストレスの他、精神ストレスも誘引となりうる。精神的な疾患とも捉えられるが、近年は脳内神経炎症による中枢性の疼痛による症状とも考えられている。痛みの分類としては慢性疲労症候群や過敏性腸症候群などと同様に痛覚変調性疼痛として分類されている。膠原病などの疾患に随伴することもある。

原因

身体的な誘引

器質的疾患の発症、手術、外傷など

精神的な誘引

環境の変化、睡眠障害、出産・妊娠、虐待・結婚、就職・転職、介護、いじめなどのストレスが誘因と報告されている(日本線維筋痛症学会診療ネットワーク)

有病率

日本での有病率は1.7%と言われており、決してまれな疾患ではない。男女比1:5程度であり女性に多い。また、慢性疼痛でありながら線維筋痛症の診断がされていない患者も多数いると思われる。

身体所見

圧痛やアロディニア(軽度の刺激で疼痛を感じてしまう状態)がある。

逆に、それ以外の身体所見は特記すべきものは無い。

また、採血ではCRPは正常値であり、他の免疫疾患などとの鑑別点である。

鑑別診断

診断には鑑別診断となるその他の疾患の除外が必要。

関節リウマチ

関節の腫脹。CRPや抗CCP抗体、RFの異常高値

シェーグレン症候群

目の乾燥(ドライアイ)、口の乾燥(ドライマウス)、鼻の乾燥(鼻が乾く、鼻の中にかさぶたが出来る)、関節痛、レイノー現象など。自己抗体(抗SS-A/SS-B抗体)

リウマチ性多発筋痛症

四肢の筋痛、発熱・炎症反応上昇、手指の浮腫、MMP-3上昇

全身性エリテマトーデス

皮疹、口腔内潰瘍、脱毛、関節痛、腎炎の出現

抗核抗体、抗DNA抗体などの自己抗体の出現

脊椎関節炎

40代以前からの項部痛・背部痛・腰痛の存在

夜間や早朝の腰背部痛またはこわばりの有無の聴取

X線、MRI、CT画像による検査

SAPHO症候群

脊椎関節炎の除外が必要、掌蹠膿疱症・重症ざ瘡(にきび)の存在。

胸肋鎖関節の腫脹・肥厚

多発性筋炎・皮膚筋炎

筋力低下、皮疹(ショールサイン、Vネックサイン)、自己抗体(抗Jo-1抗体)、CK値上昇など

診断基準

米国リウマチ学会の線維筋痛症分類基準(1990)

1.「広範囲の疼痛」の既往がある

  • 定義・疼痛は以下のすべてが存在するときに「広範囲の疼痛」とされる
    ・身体左側の疼痛、身体右側の疼痛、腰から上の疼痛、腰から下の疼痛、
       さらに体幹中心部(頚椎、前胸部、胸椎、腰椎のいずれかの痛み)が存在する

2.手指による触診で18箇所の圧痛点部の11箇所に圧痛を認める

  • 定義・約4kgの強さの手指による触診で、図1に示した合計18箇所の圧痛点のうち
       11箇所以上に疼痛を訴える

判定:上記の2項目を認める場合に、線維筋痛症と診断される。
      「広範囲の疼痛」は少なくとも3か月以上持続する必要がある

       *約4kgの圧力は目安として験者の母指の爪が白くなる程度。

治療

・抗うつ薬やガバペンチノイド系の抗てんかん薬などの投与による薬物療法

・生活習慣の改善、有酸素運動・認知行動療法などの非薬物療法

に分類される

治療開始時の処方としては以下の例がある。

・ノイロトロピン4単位4−6錠分2−3

・リリカ75mg2カプセル分2

・サインバルタ20mg1カプセル就寝前

また追記予定です。

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