アナフィラキシー患者への対応

アナフィラキシー患者へのアプローチ

 

こんてんつ

・アナフィラキシーの原因の例

・アナフィラキシー患者の内服歴は必ず聞く

・アナフィラキシーの症状と頻度

・アドレナリンの適応

・アドレナリンをどこにどれだけ打つか

・アドレナリンが効かないときの対応

・アドレナリンとともに用いられる薬

 

■アナフィラキシーを疑う

「薬を飲んだ後に皮疹が出現した」「〜を食べた後に全身に痒みが出て息苦しくなった」「造影剤後に唇が腫れてきた」などと何かのトリガーがあり典型的な症状を訴えればアナフィラキシーを疑う。

 

■アナフィラキシーの原因の例

薬物:抗菌薬、造影剤、麻酔薬、NSAIDS

食物:卵、乳製品、甲殻類、ピーナッツ、くるみ、そば

ワクチン注射:卵などの交差反応

中毒:ハチ毒、ヘビ毒

生物製剤:全血液、血漿製剤、γグロブリン製剤など

特発性(20%は原因不明)

 

・再発を予防するために病歴の問診をしっかりと行う。新しい薬を飲んでないか、普段食べないものを食べてないか。

・すべての薬にアナフィラキシーのリスクはあるが特にNSAIDやリドカイン、βラクタム系抗菌薬など日常的に使う薬でのアナフィラキシーの報告が多い。

 

■アナフィラキシー患者の内服歴は必ず聞く

内服歴を聞くことはアナフィラキシーが薬剤によって引き起こされたかどうかを調べるという意味でも重要であるが、治療薬のアドレナリンが効くかどうか推測するという意味でも重要である。例えばβブロッカー、αブロッカー、ACE阻害薬などを内服している患者ではアドレナリンは効きづらい(アドレナリンはα受容体、β受容体に働きかける)。

 

■アナフィラキシーの症状と発生頻度(参考:(J Allergy Clin Immunol.2005;115(3 suppl 2)’S483-523)

皮膚症状

蕁麻疹:90%

顔面紅潮:50%

発疹のない掻痒感:3%

呼吸器症状

呼吸困難:50%

喉頭浮腫;50%

鼻炎:15%

その他

めまい、失神、血圧低下:40%

嘔吐、下痢、腹痛:30%

頭痛:5%

胸痛:5%

てんかん:1%

 

・呼吸困難感や皮疹は誰もがアナフィラキシーを疑うが、嘔吐下痢腹痛などの腹部症状は意外と軽視されやすい。皮疹がなく腹痛だけのアナフィラキシーもあるので腹痛患者ではアナフィラキシーを頭の片隅においておく必要がある。

 

 ■アドレナリンの適応

アナフィラキシーの治療ではアドレナリン筋注がスタンダードであるが、どういう時に打つべきなのだろうか。全例か?はたまた…?

”Dr.林のアナフィラキシーのABCD”によると

全身性の皮疹もしくは抗原暴露に加えてABCDの1つでも認めたらアドレナリンの適応があるとされている。

A:airway(喉頭浮腫)

B:Breathing(喘鳴、呼吸困難)

C:Circulation(血圧低下)

D:Diarrhea(下痢、嘔吐、腹痛などの腹部症状) 

※Dは中枢神経のDでないのに注意。

例えば造影剤後(抗原暴露)の腹部症状だけでもアドレナリンの適応になる。

 

■アドレナリンをどこにどれだけ打つか

投与量:成人0.3-0.5ml、小児0.01mg/kg

投与場所:大腿外側広筋

投与経路:筋肉注射(皮下注では吸収に時間がかかるので)。重症例では静脈注射も考慮。

体位:臥位。坐位や立位ではアドレナリンの心臓への戻りが悪くなりの循環が遅くなる。

 

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画像参照:http://shinaare.blog17.fc2.com/blog-entry-1040.html?sp

 

 

■アドレナリンが効かない場合…

アナフィラキシーショックでアドレナリン筋注をしても20%の症例では症状の改善を認めないと言われている。もし症状が変わらなければ5分ごとに繰り返す(状況に応じて医師の判断で短縮可能)。

アドレナリンを適切な方法で2度投与してもショック状態であるときはグルカゴンの投与を考慮する。グルカゴンはアドレナリンとは別の機序で細胞内シグナルに働きかけてcAMPを増加させる。グルカゴンの投与量は成人で1〜2mgで静脈注射。

 

■アドレナリン以外でアナフィラキシーに使われる薬

・抗ヒスタミン薬

アドレナリンほど効果は強くないが、少し遅れて症状の改善をサポートしてくれる。H1ブロッカーとH2ブロッカーがあるが、単剤よりも併用のほうが効果が大きいので基本的には併用する。

H1ブロッカーの例:クロールトリメトロン10mg(クロルフェニラミンマレイン酸塩)

H2ブロッカーの例:ガスター20mg(ファモチジン)

 

・ステロイド

急性期には意味がない。ステロイドの投与はあくまで二峰性反応を予防するため(二峰性反応とはアナフィラキシーが起きて症状が収まってから再度アナフィラキシー症状が出現することを言う)。二峰性反応はアナフィラキシー患者の5人に1人の割合で起こり、発症時間は初回の発作後の6−8時間後と言われている。重症例では24時間後でも二峰性反応が起こる。二峰性反応を考えればアナフィラキシー患者は原則入院が望ましい。

 

また追記します。

 

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