猫、犬、人咬傷への抗菌薬投与は必要?

猫、犬、人咬傷への対応

 

 ◯まず感染の予防としてまず大量の水道水で洗う

動物咬傷に限らずどんな傷でも言えることではあるが大量の洗浄水でブラッシングしながら洗浄。もしくは生理食塩水に18G針を指して高圧洗浄(ただし200ml以上)。

洗浄をして初めて抗菌薬投与する意味がある。

 

◯抗菌薬の予防投与が必要になる例

エビデンスレベルclass1:開放骨折、関節に達する開放創

エビデンスレベルclass2:動物咬傷(猫、人、犬)、口腔内裂創

エビデンスレベルclass3:免疫不全者、汚染の強い傷、人工異物のある患者

文句なしに必要になるのは開放骨折や関節に達するような傷であるが動物咬傷も抗菌薬の必要性は高い。

 

◯ゲンタシン軟膏などの抗菌薬塗布は効果があるのか

縫合部などへの抗菌薬軟膏を塗布するのは効果があるのかについてはエビデンスが乏しいようである。感染が疑われるような傷の場合であれば抗菌薬の内服が必要であるし、内服が必要ないようなきれいな傷にはそもそも抗菌薬塗布をする必要がないという意見もある。が、ERでは慣例的にゲンタシン軟膏の塗布が行われている。

 

◯動物咬傷で危険な順に猫、人、犬

猫は見た目上危険性がなさそうに見えるが油断大敵。猫咬傷では傷が穿通枝になりやすく、40%の確率で蜂窩織炎など感染症を引き起こすという割れており全例抗菌薬が必要。第一選択薬はグラム陰性桿菌を考慮してアモキシシリン・クラブラン酸やセフトリアキソン。

 

人に噛まれることはあまりないかもしれないが、喧嘩などで握りこぶしのパンチが口にあたるいわゆるfight-biteは感染率が30%近くあり要注意。化膿性関節炎を発症することもあり、全例抗菌薬投与が必要である。感染菌としては溶連菌や黄色ブドウ球菌、嫌気性菌などで混合感染のことも多い。猫咬傷と同様にアモキシシリン・クラブラン酸やセフトリアキソンが第一選択薬

 

犬咬傷による感染率は10%前後と猫や犬に比べると低く、通常の創傷と感染率は変わらない。予防歴に抗菌薬は症例によって投与するが、抗菌薬の使用の有無で感染率は左右されないという報告もある。

ただ、犬の場合でも抗菌薬を積極的に投与したほうが良い状況もある。

・手の咬傷(血流が悪い)

・免疫不全者(糖尿病、肝・腎機能低下)

・高齢者

・傷が人工関節に近い場合

・デブリドマンが必要なような傷 

 

◯他のポイント

・予防的抗菌薬投与は通常3−5日間。感染が成立していたら最低10日間使用。

猫咬傷やヒト咬傷の場合は感染リスクが高いので原則一次縫合は行わず開放創とする

・通常の外傷と同様に破傷風トキソイド筋注は必要。

 

参考文献)

・レジデントのための感染症診療マニュアル

・新・日常診療での薬の選び方・使い方〜日頃の疑問をズバッと解決〜

・ER実践ハンドブック

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