左脚ブロック患者で心筋虚血はわかるのか?

◯右脚ブロックと左脚ブロック心電図について復習

右脚ブロックと左脚ブロックを見分けるには臨床的にはV1とV6に注目する。

・V1(もしくはV2)にうさぎの耳のような三相波があれば右脚ブロック

・V5(もしくはV6)にウサギの耳のような三相波があれば左脚ブロック

 

◯左脚ブロックのメカニズム:

左脚ブロックでは心室中隔左側に正常な脱分極が起こらず、心室中隔右側から脱分極が始まって右脚に至る。最初の脱分極による力は右室ではなく左室の方向に向かっている。よってV1誘導にはまず下向きの揺れが記録され、V6誘導において正常時見られる小さなQ波は記録されない。心筋細胞感の伝達が左室心筋細胞に伝わるのは右室が脱分極してからである。このゆっくりとした起電力ので伝達により幅が広く末端が上向きになったQRSがV5,V6に記録される。

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◯左脚ブロックでST上昇は判断できるのか?

右脚ブロックの心電図でST上昇があれば虚血として判断して良いことになっているが、左脚ブロックではST上昇がわかりにくく判断困難としばしば言われている。

この理由としては、右脚では伝導系構造が小さく、虚血による伝導障害が少ない。一方で、左脚ブロックは虚血がなくても広範囲の伝導障害が起こることによりST変化が出てしまうからである。

 

◯が、左脚ブロックにおいても虚血の判定基準がある。

Sgarbossa criteriaというものがある。QRSの向きとST変化の向きに注目して3つの診断項目が設定されている。 合計10点で3点以上の時、感度36%、特異度96%

【以下3項目】

・QRSが上向きの誘導でST上昇が1mm以上(5点)

・V1-V3のQRSが下向きでST低下が1mm以上(3点)

・QRSが下向きの誘導でST上昇が5mm以上(2点) 

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画像参照:Modified Sgarbossa Criteria: Ready for Primetime?

 

つまり、心筋梗塞の除外には使えないが、特異度は高いためにこの基準を満たせば左脚ブロックであっても虚血を強く疑うことができる。

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