絞扼性腸閉塞と単純性腸閉塞の鑑別

絞扼性腸閉塞では腸管が壊死してしまうため緊急手術の適応である。よって救急外来受診患者で腸閉塞を疑った場合、それが絞扼性か否か鑑別することは重要。

 

 (腸閉塞の分類)

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画像引用:http://chousei58.com/?p=80026

 

とある報告( Adhesive small bowel obstruction: how long can patients tolerate conservative treatment? – PubMed – NCBI))によると…癒着性腸閉塞において、単純性腸閉塞よりも絞扼性腸閉塞を示唆する所見は次の通り (絞扼性を強く示唆するものは赤字)

・38度以上の発熱

感度:67 特異度:100 陽性尤度比:∞ 陰性尤度比:0.33

・腹膜刺激症状

感度:78 特異度:98 陽性尤度比:43 陰性尤度比:0.22

・反跳痛

感度:93 特異度:37 陽性尤度比:1.5 陰性尤度比:0.19

・ペンタゾシンの効かない腹痛

感度:66 特異度:98 陽性尤度比:32 陰性尤度比:0.35

・WBC>15000

感度:74 特異度:100 陽性尤度比:∞ 陰性尤度比:0.26

・CRP3.0以上

感度:28 特異度:91 陽性尤度比:3.1 陰性尤度比:0.79

・アミラーゼ高値

感度:37 特異度:96 陽性尤度比:8.6 陰性尤度比:0.66

・ALP高値

感度:26 特異度:94 陽性尤度比:4.0 陰性尤度比:0.79

・CK>200以上

感度:19 特異度:94 陽性尤度比:2.9 陰性尤度比:0.87

・代謝性アシドーシス

感度:15 特異度:100 陽性尤度比:∞ 陰性尤度比:0.85

・BE<-2mEq/L

感度:37 特異度:80 陽性尤度比:1.9 陰性尤度比:0.79 

CTの特異的所見(closed loop、血行障害等)

感度:40 特異度:100 陽性尤度比:∞ 陰性尤度比:0.60

 

 簡単にまとめると…

腸閉塞患者で高熱、腹膜刺激症状、WBC>15000、代謝性アシドーシス、鎮痛薬効かない腹痛、アミラーゼ上昇があると絞扼性が非常に疑わしい。一方で、反跳痛やCK上昇は絞扼性を示唆するがそこまで決定打となるほどの診断特性があるわけではない。

当然腹部CTでclosed loopなど指摘できればよいが、誰にでも出来るものではないと思うので、採血や身体所見でどれだけ疑わしいかを考えて外科に相談できたらベターなのかと思います。

 

*腸閉塞でアミラーゼが上昇する理由↓

腸が閉塞すると、腸管内のアミラーゼが再吸収されるために血中のアミラーゼ値は上昇する。また、小腸の閉塞により十二指腸が拡張し、ファーター乳頭を圧迫し、膵臓の外分泌機能が障害されアミラーゼが血中に逆流することによっても上昇する。

 

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