COPDをいつ疑うか

COPDをいつ疑うか

COPDとは診断ガイドラインでは次のように定義されている。

「有毒な粒子やガスの吸入によって生じた肺の炎症反応に基づく進行性の気流制限を呈する疾患である。この気流制限には様々な程度の可逆性を認め、発症と経過が官女であり、労作時呼吸困難を生じる」

 

◯病歴

・喫煙:40pack years上でLR+3.3

喫煙がCOPDの最大の危険因子。喫煙歴が40パックイヤーズ(パックイヤーズ=1日のタバコの箱数×年数)であるとCOPDリスクは高くなる(LR3.3+)ので喫煙歴の有無だけでなく、期間と本数が大事。逆に、20パックイヤーズ以下の場合はCOPDの可能性が下がるので他の疾患を念頭におく。

・COPDは高齢・男性・長年の喫煙者の慢性咳嗽や呼吸困難を訴える患者で高頻度に診られる(逆に40代以下や非喫煙者でCOPDは非常に稀)。

 

◯COPDらしい身体所見

・wheezes:LR+4.0

呼吸音を聴診して呼気性の連続性雑音が聞こえたらかなり疑わしい。

 

・胸郭の形(感度10%、特異度99%陽性尤度比10)

COPDでは空気を吐き出しにくくなるので肺に空気がたまる→肺の過膨張から胸郭の前後径が拡大して、ビア樽状胸郭を認めることがある。

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・胸鎖乳突筋の発達

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COPDで胸鎖乳突筋が発達する理由 – つねぴーblog@内科専攻医

・呼吸音の減弱(感度37%、特異度90%、陽性尤度比3.7)

COPDが進行すると肺胞が破壊されて空気の出入り自体が少なくなるので呼吸音が減弱する。

・フーバー兆候(感度58%、特異度86%、陽性尤度比4.2)

フーバー兆候は閉塞性障害を示唆する身体所見。吸気時に胸郭下部の肋間部が外側ではなく、奇異性に内側に移動する現象である(正常の反対側)。COPDによる肺の過膨脹によって横隔膜が下に追いやられて動きが制限されているので、呼吸補助筋を用いて呼吸運動をしようとするもの。

・低栄養(COPD患者の70%では理想体重より10%体重減)

COPD患者では呼吸運動による消費エネルギーの上昇、全身炎症の存在、内分泌ホルモンの変化による安静時代謝の亢進などにより低栄養になることが多い。COPD患者の70%は理想体重の90%以下の体重減少が認められる。栄養といえばアルブミンの値で判断されてしまうことが多いが、COPD患者では官女に栄養障害をきたすマラスムス型の低栄養であるのでアルブミンは低下しないことも多い。採血で評価する場合はより半減期の短い鋭敏な指標であるトランスサイレチンやトランスフェリンなどを用いることが良い。

 

 

◯胸部CTでのCOPD像

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参考画像:当院で多く診察する呼吸困難を伴う病気 – ながはまクリニック

 

CT上、気腫像はわかりやすい。が、気腫像=COPDではない。COPDには非気腫型(末梢気道優位型)もあるのでCTで気腫像がないからCOPDは否定的とは言えない。結局は呼吸困難がCOPDなのかどうかはCT画像も含めて総合的な判断が必要。

 

◯COPDの診断基準

慢性に咳、喀痰、労作時呼吸困難を呈する患者において次の条件を満たした時

1,気管支拡張薬投与後のスパイロメトリーでEF1/FVC<70%を満たすこと

2,その他の気流閉塞をきたす疾患を除外すること(気管支喘息、びまん性汎細気管支炎、閉塞性細気管支炎、気管支拡張症、肺結核、塵肺症、肺リンパ脈管筋腫症、うっ血性心不全)

 結局は特異的なマーカーが無いのでCOPDらしい所見を集めて他の疾患の可能性を否定していくほかない。

 

また追記更新します。

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