人工呼吸における換気の設定

換気がうまくいってるかどうかはPaCO2(正常値35〜45)をみる。

呼吸不全でCO2を吐き出せないとCO2は上昇、過換気ならCO2は下がる。

 

分時換気量とPaCO2は相関するので人工呼吸器管理中の患者では分時換気量を調節することでPaCO2をコントロールする。

分時換気量=一回換気量×呼吸回数

よって分時換気量を変えるには一回換気量か呼吸回数のどちらかをいじれば良い。

 

◯一回換気量に関して

一回換気量とは文字通り患者が一回の呼吸でどれだけ換気できるかであるが、この数値はおおよそ体重で決まってくる。理想体重1kgあたり6-8ccで調節するので例えば体重が50kgの人であれば一回換気量は400-500ccの間で調節することになる。

ただARDSをきたしているような状況だと換気能力が低下するので6cc/kgと低めで設定する。

*体重は実体重ではなく理想体重で設定するので注意。

 

 

◯呼吸回数に関して

一回換気量に比べたら呼吸回数の方が大きな影響を及ぼす。

PaCO2を下げたい時は呼吸回数を上げて、PaCO2を上げたい時は呼吸回数を下げる。

 

◯PaCO2の値だけにとらわれないように注意、大事なのはpH

PaCO2の値は他の検査値と同様点で見てはならない。

・悪化の経過にあるのか、改善の経過にあるのか

・PaCO2がなんのために上がっているのか、何かの代償で上昇しているのではないか

・その患者にとってもともとPaCO2が高い可能性はないのか

 

(ケース1)

例えば脳出血で意識障害の患者などでPaCO2が低い場合も上げてはならない。(CO2が低くなることによって脳血管を収縮させて脳浮腫を生理的に抑えている状態なのでPaCO2を正常化させてしまうと脳浮腫がひどくなる)。

(ケース2)

例えば、pH7.57 , PaCO2 67 , HCO3- 45という場合はどうだろうか。

PaCO2が上がっているから換気を上げて下げてはいけない。

というのも血液ガスの解釈としてはpH的にアルカローシス、HCO3-が上がっているので代謝性アルカローシス。更にPaCO2が上がっているのは呼吸性に代償されていると考えられる。よってCO2の上昇はこれ以上アルカローシスが進まないようにと生理的な防御反応であるので人工呼吸で無理やり下げてはならない。

(ケース3)

例えば意識障害患者でpH7.2 , PaCO2 63, HCO3- 27の場合はどうだろうか。

phではアシドーシス、PaCO2が高いので呼吸性アシドーシス。HCO3が上がっているので代謝性に代償されている。よってこの場合は呼吸が悪くなって換気ができずにCO2がたまってアシドーシスになっている。よって換気によってCO2を下げることによってアシドーシスが改善されると考えられる。

(ケース4)

慢性的なCOPD患者でpH7.37 ,PaCO2 65 ,HCO3- 65の患者ではどうか。pHはアシドーシス、PaCO2がたまっているので呼吸性アシドーシス。HCO3-も高いので代謝性に代償されている。が、この場合はpHが正常範囲に収まっている。おそらく長年の経過でCO2が慢性的に高く、HCO3-の代償がうまくいっていることを示している。この状態で特に症状がないのであればPaCO2を下げる必要はない。むしろ下げてしまうと自発呼吸が止まる原因にもなるので慢性的にCO2高値な人は無理に下げない。どのCO2値がその患者にとって普通なのか呼吸状態と頻回の血ガス採取で判断する。

 

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