CRP上昇のない発熱の鑑別

そもそもCRPとは

CRP(C反応性蛋白)は細菌感染の際に肝臓で合成が促進され血中濃度が上昇する。故に感染症を疑う時はルーチンで測定されるマーカーである。

CRPは細菌の細胞膜であるリン脂質二重層に結合し、凝集することで免疫システムの補体を活性化しマクロファージによって細菌を貪食させたり菌体を溶菌させて感染症から体を守っている。つまり、CRPは細菌感染から生体を防御するために産生されているある種の防御タンパクなのである。一方、ウィルスは細菌のように細胞ではないためにリン脂質からなる細胞膜も持たない。故にCRPが産生されたところでウィルスを攻撃できるわけではなく、ウィルス感染ではCRPの産生は体内では限定的。

しかし、感染や何かしらの細胞障害が起こると体内でIL6などのサイトカインが産生され、それが肝細胞に働くことによってCRP産生も起こるので強力なウィルス感染ではCRPはしばしば上昇する。

ウィルス感染でCRPが上昇しない理由 – つねぴーblog@内科専門医

 

熱発しているがCRPが上がらない鑑別

①中枢神経感染症(無菌性髄膜炎)

前述の通り、CRPは感染によってIL6などのインターロイキンが肝細胞に働いて産生されるため、炎症が中枢に限局しているとCRPはつくられにくい。ウィルス性髄膜炎や結核性髄膜炎ではCRP陰性の事が多い。CRPが陰性であれば重篤な感染症は否定的と思われがちであるが、髄膜炎であれば腰椎穿刺をしなければ診断できない。

 

②SLE(全身性エリテマトーデス)

SLEは熱発して活動性が高いときでもCRPの上昇が乏しいことで知られている(ただし血沈は上昇する)。なぜ、SLEではCRPが上昇しないのか。SLEの活動に関与するサイトカインがIL6ではなく、IFN-αであることが一つの理由とされている。SLEが確定診断されている状況でCRPの上昇が著明であれば細菌感染の合併や血管炎のあるいは漿膜炎(心外膜炎、胸膜炎、腹膜炎)併発などを考える。

 

③熱射病

熱射病ではCRP上昇を伴わない(臓器障害を呈するほど重症化したら話は別)。特に体温調節機能が低下している高齢者で高熱、CRPは陰性の場合は生活環境を考えて熱射病の可能性を考える。

 

④感染初期

感染の初期は熱発およびWBC上昇は見られるがCRPの上昇は少し遅れる。よって、採血するタイミングが早いと細菌感染であってもCRPは偽陰性となりうる。

細菌感染でCRPはWBCに遅れて上昇する理由 

 

また追記します。

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