インスリン分泌能とその検査

インスリンは膵臓のβ細胞から分泌されて血中の糖を細胞内に取り込ませて血糖値を低下させるホルモンである。1型糖尿病ではβ細胞が破壊されて慢性的にインスリン分泌が低下し、2型糖尿病でも食後の追加分泌が低下する。インスリンがβ細胞からどの程度分泌されているかの指標には以下に紹介するようにCPRやCペプチドインデックス、インスリン分泌指数などがある。

・CPR(C peptide immunoreactivity)

CPRとはCペプチド免疫活性のことであり、内因性のインスリン分泌能を調べることが出来る。CPRはインスリンの前駆体のプロインスリンからインスリンが作られる際に一緒に作られる副産物である。インスリンの合成量とCペプチドの合成量は1:1で等しいのでCペプチドの濃度を調べればインスリンが体の中でどれだけ作られているのかわかる。(逆に言えば、インスリン注射で外から入れられたインスリンはCペプチドに反映されない)。腎機能に問題がなければCペプチドは尿中に排泄されるので、尿中のCPRを測定することで一定時間でどれだけのインスリンが作られたか調べることが出来る。

血中C-ペプチドの基準値

インスリン分泌能の指標には空腹時血中Cペプチド値と24時間尿中Cペプチド排泄量がインスリン分泌能の指標となる。具体的には以下のとおりである。

・空腹時血中Cペプチド<0.3ng/ml→インスリン依存性糖尿病

・空腹時血中Cペプチド<0.6ng/ml→確実なインスリン分泌能低下

・空腹時血中Cペプチド<1.0ng/ml→インスリン分泌能低下

・24時間尿中Cペプチド<20μg/日

(注意点)Cペプチドは腎臓から排泄されるために腎機能が低下している場合はインスリン分泌が少なくてもCペプチドの値は高くなりやすい。

・CPRインデックス(CPI)の定義と基準値

CPRインデックス=空腹時血清CPR×100÷FPG

 CPI(CPRインデックス)0.8以下では分泌予備能低下のためインスリン治療が必要

CPI 0.8〜1.2の間であればグレイゾーンと考える

CPI1.2以上であれば分泌能は保たれており食事療法や経口血糖降下薬で対応可能と考える。

CPI2以上であればインスリン分泌十分=インスリン抵抗性型の糖尿病

(TIPS)

*CPRは空腹時に測定するが、食後に測定した場合は×1.5〜2.0と考える

*eGFR<30のような腎不全ではCPRは高くなる→×1/2として考える

*糖毒性がかかっている状況ではCPIは低くなり、糖毒性が解除されるとCPRも回復してくる。

ちなみに、インスリン分泌能が低下している時にSU薬などのインスリン分泌薬を使って更にインスリンを出させるというのは推奨されない。弱ってる膵臓を絞って更にインスリンを出させるようなもので余計早くだめになってしまう。インスリン分泌能が低下している時は膵臓の疲れを休ませてあげるというような意味合いでインスリン注射で外部から補ってあげるというのが正しい方法。逆に、インスリン分泌能が十分に保たれている患者にインスリン分泌促進薬を使うのは良い適応。

(次の2つは内分泌代謝内科向け)

・インスリン分泌指数(insulinogenic index)

インスリン分泌指数とは75gOGTTで負荷後30分の血中インスリンの増加量を、血糖値の増加量で割ったものをいう。

インスリン分泌指数=

(負荷後30分の血中インスリン値  負荷前の血中インスリン値) ÷ (負荷後30分の血糖値負荷前の血糖値) 

△IRI(30’)μU/ml ÷ △PG(30’)mg/dl とも表現する

基準値は0.4以上であり、 糖尿病患者では0.4以下を示す。

・グルカゴン負荷試験

グルカゴンとは膵臓のα細胞から分泌されているホルモンでありグリコーゲンをグルコースにして血糖値を上げるが、それと同時に直接膵臓β細胞に働きインスリンを分泌させる作用がある。実際の検査としては、グルカゴン静注後5〜6分のCペプチドの濃度を測定し、血中CPRが2.0ng/ml未満の場合はインスリン分泌能が保たれていないと判定される。

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