薬剤性肝障害を考えたら

・肝胆道系酵素上昇をみたら、根拠もなく薬剤性と思い込まずに肝障害をきたしうる他の原因を丁寧に除外する。

 

・薬物性肝障害ではAST,ALT上昇メインの肝細胞障害型とALP、γGTP上昇メインの胆汁うっ滞型、あるいは両方が混在したタイプといずれの可能性もありうる。

 

・原因薬剤として報告の多いのものから順に抗生剤、向精神病薬、健康食品、鎮痛薬、循環・呼吸器系薬剤、漢方・サプリメントなど。外用薬でも起こる。

 

・薬物リンパ球刺激試験(DLST)は役に立つが参考程度。というのも、薬剤性肝障害の機序としては用量依存性のタイプ(アセトアミノフェンなど)と用量非依存性の個人の特異体質によるものがあげられる。DLSTでわかるのは後者の用量非依存性の中でもアレルギー機序のものだけである。よってDLST陰性であっても薬剤性肝障害の否定は出来ない。

 

・治療方針としては被疑薬の投与中止が大原則。複数の薬剤を投与されていて、更に肝障害が軽度の場合は可能性の高い薬剤から順に中止していくが、肝障害が中等度から高度の場合は最初から全ての薬剤を中止する必要がある。

 

・薬剤中止で改善しなければ、やはり他の肝疾患がないか今一度確認する。

・例えば自己免疫性肝炎などは慢性肝炎として診断されることが多いが、時に急性肝炎様に発症することもある。抗核抗体やIgGなど特異的なマーカーが陰性で肝生検をしなければ診断できないこともある(あれよあれよという間に肝障害が悪化して肝不全になったら取り返しがつかない)。

 

・原因薬剤中止しても改善がなく、原因不明な場合は肝庇護薬を考慮。強力ネオミノファーゲンシー:20−100ml/dayもしくはウルソデオキシコール酸1回100mg1日3回など。ただし、大前提として肝予備能が悪化している状況では肝庇護薬を判然と続けて経過観察していてはならない。PT時間や黄疸の増悪などに注意を払う。

 

DDWJのスコアリングシート↓

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