細菌性肺炎(定型肺炎)と非定型肺炎の鑑別

細菌性肺炎(定型肺炎)と非定型肺炎の違いと鑑別

肺炎の分類の一つに非定型肺炎か定型肺炎かで分ける分類方法がある。

非定型肺炎というのは文字通り普通の肺炎と異なるということであるが、これは歴史的に1940年代に肺炎を起こしているもののグラム染色や培養検査で病原体を検出できないことからこう呼ばれるようになった経緯がある。現在では正体はわかっており、『非定型肺炎=マイコプラズマ、レジオネラ、クラミジア、ウィルスなどによる肺炎』と考えて良い。一方で、非定型肺炎ではない肺炎は全て定形肺炎(細菌性肺炎)である。

現在において、非定型肺炎か否かを鑑別する意義としては抗菌薬の使用が変わってくるからである。つまり定形肺炎ではβラクタム系抗菌薬が有効であるが、非定型肺炎ではβラクタム系抗菌薬は効かない

■細菌性肺炎の原因菌:

肺炎球菌、インフルエンザ菌、黄色ブドウ球菌、クレブシエラ(肺炎桿菌)、モラクセラ・カタラーリス

■非定型肺炎の原因菌:

マイコプラズマ、クラミジア、レジオネラ、オウム病、Q熱コクシエラなど

細菌性肺炎と定形肺炎の鑑別

非定型肺炎を考えるのは以下のものの4つを満たした場合である。(3つ以下であれば細菌性肺炎疑い)

・60歳未満(細菌性肺炎では高齢者が多い)

・乾性咳嗽/頑固な咳

・基礎疾患が軽微

・痰がない(細菌性肺炎では膿性痰が特徴的)

・白血球が10000/uL以下(細菌性肺炎では白血球上昇)

・聴診所見が乏しい

上記6つのうち5つ以上を満たす場合は感度77%、特異度99%と報告されており、特これを満たし場合は非定型肺炎の可能性が非常に高いと考えられる。一方で感度はそこまで高くないのでこれらの項目を満たさなくても非定型肺炎の否定は難しい。

・非定型肺炎という大雑把な状態のまま治療を開始しない

非定型肺炎と言っても原因菌に寄よってかなり異なる臨床症状を取りうるので鑑別が重要であり、それぞれの特徴を捉えておく。

◯マイコプラズマ肺炎

特徴は頑固な咳、随伴症状として中耳炎・咽頭炎・鼻炎などがある。

緩徐に発症し比較的軽症の肺炎。

診断にはLAMP法(喀痰または咽頭ぬぐい液)を用いた遺伝子診断かペア血清を測定する。

→治療はアジスロマイシン3日間(内服もしくは点滴)

◯クラミジア肺炎

発熱・咳・痰と定型肺炎と似た臨床症状を呈する。

頭痛や副鼻腔炎、咽頭痛、中耳炎などを呈することがある。

2相性の経過を呈することがある。

ペア血清で診断だが急性期には結果がわからないので臨床的な価値は限定的。

疑ったら治療となるが、急性期に検査ではっきりとさせることが難しいので現実的には疑ってしまったらクラミジア肺炎もカバーして抗生剤投与を行うしかない(アメリカのガイドラインでは市中肺炎の治療では前例非定型肺炎のカバーを推奨している)。

→治療はアジスロマイシン500mg1日1回3日間

◯オウム病

感染した鳥の糞や・尿・気道分泌物を含む粉塵を吸入することで感染する。

(潜伏期間は2週間程度)。肺炎患者が来た場合は問診で2週間以内の鳥との接触歴がないか聞けたらベター。

症状は急激に発症する高熱・強い頭痛・筋肉痛・乾性咳嗽が特徴的。

頭痛が強く髄膜炎が疑われてしまうこともある。確定診断は抗体検査だが2週間以上の間が必要。

◯レジオネラ肺炎

・潜伏期間は2週間程度(土壌、自然水系、人工水系などへの暴露歴の問診が大事)

重症肺炎の鑑別の1つとなる。高熱・消化器症状・神経症状が見られる。

検査でも低ナトリウム血症、低リン血症、AST・ALTの上昇、CK上昇、血尿・蛋白尿などが特徴的

・検査は尿中レジオネラ抗原が簡易だが感度が低いので否定には使えない。喀痰培養

→治療はレボフロキサシン(500mg)(5−7日間程度)

もしくはアジスロマイシン500mg1日1回(3−7日間程度)

参考:亀田流市中肺炎診療レクチャー

また追記します。

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