抗リン脂質抗体症候群でAPTTが延長するのは何故か
【抗リン脂質抗体症候群とは】
リン脂質、あるいはリン脂質結合タンパク質に対する自己抗体(抗カルジオリピン抗体、ループス抗凝固因子)などが作られてしまい、動静脈血栓や習慣性流産などを引き起こしてしまう症候群である。本症の特徴としては、生体内においては血栓が作られやすくなっているのに対し、試験管内における検査では血小板減少やAPTT延長などの所見が見られるということである。つまり、所見が乖離しているのである。
*APTTとは
活性化部分トロンボプラスチン時間のことであり内因系の凝固カスケードがうまく働かなくなると、APTTは延長する。APTTが延長する原因としては凝固因子12、11、9、8因子などの欠乏が代表的である。
では、これらの凝固因子の欠乏していない抗リン脂質抗体症候群でなぜAPTTが延長してしまうのだろうか。
そもそもAPTT測定の原理であるが、試験管内で測定するときには採取した血漿に活性化剤とリン脂質からなるAPTT試薬を加えて、フィブリンが析出するまでの時間を測定している。
よって患者の血漿の中にループスアンチコアグラントという抗リン脂質抗体が含まれているので、これががAPTTの測定に必要なリンと結合してしまい、見かけ上、凝固系が正常に機能しなくなるのである(=APTT延長)。
一方で、生体内においては抗リン脂質抗体は血小板の凝集を抑制するプロスタサイクリンの産生を抑制したり、線溶系に働くプロテインCの活性化を阻害する働きがあるので血栓が出来やすくなる。
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