◯抗生剤投与歴があれば、CD感染症などによる下痢も考慮する。CD陽性であればビオフェルミンなどの整腸剤で下痢が落ち着くのを待つ。その後GFOを2,3日投与して落ち着いていれば経腸栄養再開。
◯CD検査が陰性であっても、便培養で常在菌が検出されないような明らかに通常の腸内細菌叢が破壊されてしまっている場合でも同様の対応を行う。
◯その他免疫力低下のエピソードがあれば、MRSA、サイトメガロウィルス腸炎やカンジダによる下痢などにも留意が必要。これら感染症では下痢への対応が根本的に異なるため、除外が必要。
・投与速度が早かったり、投与量が多ければ下痢のリスクは増える。
胃への標準投与速度は200ml/hである。(空腸の場合は100ml/h)
投与時間の延長(間欠的投与から持続投与への変更などに)
・特に絶食が続いて腸の粘膜が萎縮している状態であれば、急速に大量の栄養剤が投与されると、対応しきれずに下痢を起こしてしまう。
・投与の開始時は予定投与量の1/3〜1/2程度と少量から開始し、様子を見ながら徐々に増量していく。
栄養剤の組成で注目しなければならないのは
◯脂質の量
脂質は下痢の原因になる。下痢が起こっていたら脂質の少ない栄養剤への変更もしくは脂質フリーの栄養剤への変更を検討する。
◯乳糖が含まれているか
日本人は乳糖不耐症の人が一定数いる。下痢があればやはり乳糖の含まれていないものに変更するべきであるが、日本で市販の経腸栄養剤は多くが乳糖は含まれていない。
◯食物繊維が含まれているか
食物繊維があると下痢の抑制につながる。下痢を起こしているのならば、食物繊維の含まれている栄養剤に変更するか、食物繊維を別途投与する。
◯タンパク質に関して
タンパク質よりも、窒素源がペプチドで配合されているペプタメンなどの消化態栄養剤も下痢に有効
◯浸透圧
・浸透圧に関しては多くの商品が血管内浸透圧より高くなりすぎないように作られているが、確認の上、浸透圧が高ければ低いものへの変更も考える。
例えば、窒素源がアミノ酸の成分栄養剤は窒素源がタンパク質の半消化態栄養剤と比べると浸透圧は高いため、成分栄養剤で下痢を起こした場合は半消化態栄養剤に変更も検討する
◯半固形栄養剤
半固形化の栄養剤は胃食道逆流や誤嚥性肺炎の予防といった目的で使用されていたが、胃から十二指腸に流れるスピードがゆっくりのため、下痢の改善にも効果があるとされている。また、半固形化に用いる食物繊維が下痢に効果があるともされている。
◯プロバイオティクスの使用
プロバイオティクス(乳酸菌や、それらを含む食品のこと)やプレバイオティクス(オリゴ糖など腸内の有用菌を増殖させる働きのあるもの)の使用をする。また、汎用の流動食を使用している場合は、乳酸菌発酵成分配合流動食へ切り替えるのも一つの方法。
★栄養剤の成分や半固形化については十分なエビデンスがあるわけではない。一方で様々な成分が含有されているので、どれが効くかはその都度試して見る他無いというのはある。
感染性腸炎が否定的であれば、薬剤による下痢の対応も検討する。
ロペミンなどの下痢止めや、半夏潟心湯、五苓散、柴苓湯などの漢方も下痢に効果がある
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参考文献:
https://www.meiji.co.jp/meiji-nutrition-info/pdf/science/enteral/basic03.pdf
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