細菌性咽頭炎での抗生剤の選択

【溶連菌咽頭炎とは】

急性咽頭炎は細菌性とウィルス性に分けられる。80-90%がウィルス性と言われており抗菌薬の必要がないが、残りは細菌性の咽頭炎である。細菌性とウィルス性の鑑別、そして不必要な抗菌薬投与を防ぐための方法としてcentor criteria(センタースコア)が有用。

<centor criteria>

38度の発熱 +1点

前傾部のリンパ節圧痛・腫脹 +1点

咳嗽がない +1点

扁桃の腫脹or白苔 +1点

3〜14歳 +1点

45歳以上 1点

 centor criteriaで2点以上あれば細菌性咽頭炎を疑う。また、細菌性咽頭炎であればほぼ全例がA群溶連菌が原因であるので、溶連菌迅速検査で高感度に調べることが出来る(細菌性として頻度は少ないものの、マイコプラズマや梅毒も原因になりうる)。

基準で2点あれば溶連菌迅速検査の適応、3点以上であれば溶連菌性咽頭炎と診断し、エンピリックセラピーを開始する。一方で、基準を1つしか満たさなくても陰性的中率は80%であるので溶連菌性咽頭炎否定できるわけではない。

 細菌性の場合ほぼ全例A群β溶連菌(≒化膿性レンサ球菌)が原因と言われていて、培養せずに溶連菌迅速検査で咽頭をこするだけで調べることが出来る。

もし、迅速検査陰性であれば、伝染性単核球症を疑い採血で肝胆系酵素上昇やリンパ急上昇などを確認する。

【溶連菌咽頭炎の治療は10日間と長い】

 治療例としてはサワシリン®(アモキシシリン、AMPC)1回500mgを1日3回、10日間処方。多くの場合抗生剤は著効し、咽頭痛などの症状は2〜3日で速やかに改善するが、その後もしっかりと内服を続けなければならない。溶連菌咽頭炎の治療の目的は有症状期間の短縮だけでなく、続発症の予防の観点からも重要である。

感染後1〜5週間の経過で急性糸球体腎炎、リウマチ熱、リウマチ性心疾患などを合併することがあり、これらは感染によって作られる抗体の交差反応による自己免疫学的な機序が原因として考えられている。

・急性糸球体腎炎では免疫複合体が腎臓の糸球体に沈着し、乏尿、血尿、蛋白尿などの症状を呈する。

・リウマチ熱は主に17歳以下の小児に発症し、溶連菌のMタンパクに対して作られた抗体が、構造の似ている心筋にも結合してしまい、感染を繰り返すことで心臓弁膜症を引き起こしてしまう。

 *ちなみにペニシリン系抗生剤を10日間服用しても15%の症例で菌が残存してしまうという報告もある…。

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