不明熱の検査と鑑別診断(更新中)

■不明熱の定義

「三週間以上38.3度以上の発熱が続き、3日以上診療(3回以上の外来か3日以上の入院)しても原因がわからないもの」が不明熱と定義される。原因としては感染症、悪性腫瘍、自己免疫疾患が多い。

感染症:感染性心内膜炎、結核、前立腺炎、腹腔内膿瘍、肛門周囲膿瘍、前立腺炎、伝染性単核球症、腸チフスなど

悪性腫瘍:悪性リンパ腫、肝細胞癌、腎細胞癌など

自己免疫疾患:SLE、側頭動脈炎、血管炎、Still病、炎症性腸疾患(クローン病、潰瘍性大腸炎)など

 その他:薬剤性(サプリメントも)、甲状腺機能亢進、甲状腺炎、深部静脈血栓症なども

熱型の分類

・稽留熱:体温の日内変動が1度以内で最低体温が37度以上

大葉性肺炎、腸チフス、ブルセラ病、粟粒結核、腫瘍熱などが鑑別に上がる。

・弛張熱:体温の日内変動が1度以上かつ37度以上

鑑別としては敗血症、膿瘍、膠原病、成人still病

・間欠熱:体温の変動が1度以上かつ最低体温が平熱(37度以下)

間欠熱では高熱と平熱を繰り返す。原因としては小児なら溶連菌感染症、大人なら尿路感染症、海外渡航歴があればマラリアなどを考える。その他胆管炎、敗血症、コロナ感染症、マラリア、felty症候群、腫瘍熱などでも起こる。

・回帰熱:発熱期と無熱期を繰り返す。

鑑別としてはボレリア感染およびホジキンリンパ腫。ボレリア感染はスピロヘータの一種であるボレリアを原因菌として、シラミまたはダニによって媒介される反復性の発熱性疾患。頭痛・筋肉痛・嘔吐を伴う発熱が3−5日続き、その後、一旦治ったかのような無熱期を挟んで同様の発熱を繰り返す。日本でも北海道でマダニが媒介する回帰熱の発生が確認されている。

腫瘍熱を疑う所見は

・37.8度以上の発熱が最低1日1回あり、2週間以上持続するもの

・採血・血液培養・レントゲンなどで感染症を示唆する所見がないもの

・薬剤や輸血などによる発熱を疑うものがないもの

・抗生剤使用1週間経過しても改善がないもの

・ナプロキセンによりすぐ解熱し、それを用いれば平熱を保てること

by Neoplastic Fever -A Proposal for Diagnosis-. Arch Intern Med.1989;149(8):1728-1730.

■不明熱診断のための検査

・問診:通常の問診に加えて海外渡航歴、性交歴、動物との接触歴、職業歴など

・身体所見:相対的徐脈、心雑音、表在リンパ節の腫脹、直腸診での圧痛、甲状腺の圧痛、眼底病変、肝叩打痛など

・一般採血、尿検査、胸部レントゲン

(尿検査では)

蛋白尿や血尿→膠原病による腎障害、白血球尿→尿路感染症

(血液検査では)

好中球増加、核の左方移動で細菌感染

リンパ球増加でウィルス感染

貧血と白血球の異常は白血病などの血液疾患

フェリチン→成人Still病、血球貪食症候群を示唆

赤沈→側頭動脈炎、リウマチ性多発動脈炎を示唆

(胸部レントゲン)

心疾患、肺疾患のスクリーニング

・細菌培養

感染症疑うなら痰培養、尿培養、血液培養、便培養

(抗菌薬投与中であれば一旦中止し、再度培養の取り直し)

・末梢血スメア

血液腫瘍やマラリアの鑑別

・造影CT(胸部、腹部、骨盤)

膿瘍は単純CTではわからない

・腹部エコー

肝膿瘍などを診断可能

・心エコー

感染性心内膜炎の診断に。経食道のほうが感度は高い 

・抗核抗体

自己免疫疾患の鑑別に。C3,C4、RF、血沈

・肝生検

肝脾腫やALP高値の場合に考慮。不明熱に対してはかなり有用な検査

・大腸内視鏡

クローン病や潰瘍性大腸炎を疑うときに実施

 ・FDG-PET

局所性炎症性疾患の除外、血管炎の診断に有用。が、費用が高いのが問題

更新中…。

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