エルシニア腸炎とは

急性虫垂炎と似た症状を呈するものとして、エルシニア腸炎がある。

 

エルシニア腸炎はYersinia Enterobacteriaceaeによる腸管感染症であり、回腸末端に侵入し、有痛性の腸間膜リンパ節炎・右下腹部痛を生じさせる。

Yersinia Enterobacteriaceaeは低温でも成長可能であり、冬に流行しやすい。冷蔵庫の中でも増殖する。ネズミやうさぎなどの野生動物や家畜に存在し、保菌状態の動物に接触することで感染する人畜共通感染症。

 

発熱や嘔吐に加えて、水様便や血便あるいは下痢を伴わない右下腹部痛など様々な臨床症状をとりうり、時に虫垂炎と誤診されうる。

 

エルシニア腸炎は免疫反応異常があり、結節性紅斑や多発性の反応性関節炎を呈しうる結節性紅斑はエルシニア腸炎の約30%に合併し、発熱と腹痛出現の2−20日後に四肢体幹に出現し、やがては消失する。反応性関節炎は約15%に合併。下痢発症後2日〜30日後に出現し、時期は幅広い。症状は一ヶ月以上持続することも。

診断には便培養がキホンだが、常温下では他の菌の増殖に負けて検出されないことも。その他、CTが有用であり、回腸末端の炎症反応を認めるが、虫垂の腫大を認めなければエルシニア腸炎を考えることができる。

エルシニア腸炎自体の治療は基本的に不要とされているが、免疫不全者などでは敗血症に移行する可能性がある場合は抗菌薬が必要。(セフトリアキソン、ST合剤、アミノグリコシド系など)。

 

【エルシニア腸炎のCT画像紹介その1】

f:id:tsunepi:20171001102232p:plain

参照:http://fmh-radiology.sakura.ne.jp/syourei-erusinia.html

 

その2

f:id:tsunepi:20171001102332p:plain

参照:http://mymed.jp/di/wzy.html

 

ちなみにエルシニア腸炎以外で回腸末端炎や腸間膜リンパ節炎をとりうる感染症としてはサルモネラやカンピロバクター、結核菌、アデノウィルスなどがある。

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