複数の酸塩基平衡のある血液ガスの解釈

複数の酸塩基平衡のある血液ガスの解釈メモ

 

◯例1

pH:7.30,PaCO2:23,HCO3-:12.4,Na120,Cl87,乳酸27.mg/dl

 

・アシデミア

・HCO3-が低下しているので代謝性アシドーシス

・HCO3-が基準より11.6低下しているので、11.6×1.4=16.2程度CO2低下で代償されるはず。

・PaCO2は23であるのでほぼ適切な代償。

・アニオンギャップ開大あり(Na-Cl-HCO3-=20.6)

・AGは通常より20.6-12=8.6程度上昇。

・補正HCO3-=12.4+8.6=21

(よって、アニオンギャップ開大型アシドーシスだけでなく、アニオンギャップ正常型アシドーシスもあることがわかる)。

 

答え:アニオンギャップ開大型代謝性アシドーシス+アニオンギャップ正常型代謝性アシドーシス

 

◯例2

ph7.54、PaCO2:35、HCO3-:30.1、Na141、Cl-100、乳酸7.1mg/dl

・アルカレミア

・HCO3-が上昇しているので代謝性アルカローシス(PaCO2が下がっているので呼吸性アルカローシスも考えられるが正常値からのずれの割合はHCO3-の方が大きいのでメインは代謝性アルカローシスと考える)

・HCO3-は基準値より6上昇しているので6×0.7=4.2程度PaCO2は代償的に上昇するはずである。しかし実際にはPaCO2は低下しているので呼吸性アルカローシスの合併も考える。

・アニオンギャップ開大はなし

 

答え:代謝性アルカローシス+呼吸性アルカローシス

 

◯例3

pH7.25,PaCO2:23,HCO3-:9.8,Na:138,Cl-:102,乳酸89.9mg/dl

・アシデミア

・HCO3-が低下しているので代謝性アシドーシス

・HCO3-が基準値より14.2低下しているのでPaCO2は代償的に14.2×1.2=17.04下がる=PaCO2は23前後になるはずであるが、実測値もほぼ同じなので適切に代償されている。

・アニオンギャップは138-102-10=26と開大。(正常AGより+14)

・補正HCO3-は9.8+14=23.8であり基準値に落ち着くので代謝性アシドーシスの他に正常代謝性アシドーシスも代謝性アルカローシスも合併していないと判断できる。

・乳酸は89.9mg/dlであるが乳酸1mmol/L=9.01mg/dlと換算できる。また乳酸は1価の酸なので1mmol/L=1mEq/Lであるので、乳酸89.9mg/dl=10mmol/L=10mEq/Lであるのでアニオンギャップ上昇が14mEq/Lであるので全てを説明することはできない。よって、乳酸上昇による代謝性アシドーシスの他に、別の原因のアニオンギャップ開大型代謝性アシドーシスがあることがわかる。(腎不全による不揮発性の酸の上昇など)

 

→答え:AG開大型代謝性アシドーシス(乳酸上昇と他のAG開大型アシドーシス(血ガスだけでは特定不可能)

 

◯例4

pH7.34,PaCO2:52,4,HCO3-:28.0,Na:137,Cl-:99,乳酸9mg/dl

・アシデミア

・PaCO2上昇しているので呼吸性アシドーシス

・PaCO2が基準より12上昇しているので、急性の代償と考えるとHCO3-は12×0.1=1.2上昇しているはずである、しかし28なので予想よりもHCO3-が高いために代謝性アルカローシスの合併も指摘できる。

・アニオンギャップは10と開大なし

 

→答え:呼吸性アシドーシス+代謝性アルカローシス

 

また追加します。

この記事が気に入ったら
フォローしてね!

コメント

コメントする

目次