(症例)内頸静脈からCVC挿入時に気をつけたい血管奇形(PLSVC)

症例:79歳男性

現病歴:尿道カテーテル挿入の患者がseptic shockを発症。急性腎不全あり無尿の状態。腎代替療法を開始するために右内頸静脈から透析カテーテルを挿入した。

カテは抵抗なくスムーズに挿入できた。

その後のカテーテル先端確認のレントゲンが以下の通り。

カテーテルが胸骨の高さで正中線を越え、左縦隔に進入していた。

カテからの逆血は良好。血ガスでは静脈内と判断。

 

 

さて、何を考えるでしょう。

 

 

 

胸部CTでは次の通り

 

胸部CTでは、左上大静脈が左縦隔に沿って走行し、その後に右心房に流入する大きな冠状動脈洞(アスタリスク)に接続していることが示された(矢頭)。

 

→答え:上大静脈遺残(Persistent left superior vena cava: PLSVC)

 

✅左上大静脈遺残は、しばしば偶然に発見されるが、胸部静脈系で最も一般的な異常である。発生頻度は健常人で0.3〜0.5%と言われている。先天性心疾患があると発症頻度は増えるが、左上大静脈遺残だけでは血行動態に影響を与えないので特に治療の必要はなし。PSLVCにCVC先端が入っていればCVルートとしては問題なく使えると思われるが、血栓形成しやすくなるという報告もあり、抜去するのが無難と思われる。

何も事前情報なしでCV先端確認で左上大静脈遺残にカテ先があるとおそらく焦ると思うので知識として知っておくと良いかも知れない。特に左内頸静脈からのアプローチの場合はPLSVCに進んでしまう可能性が高い。

✅胎生期には上大静脈は左右に2本あり、本来であれば発生の過程で右側で一本に合流するが、胎生期の左前主静脈が何らかの原因で閉塞しなかった場合に発生。

✅PLSVC の大多数は無症状であり、左鎖骨下静脈からの心臓ペースメーカー、もしくは本症例のように中心静脈カテーテル挿入時に偶然発見されたという報告がほとんど。

 

・わかりやすいイラスト

画像参考:左上大静脈遺残(PLSVC)と3本脱血の関係

 

・左鎖骨下静脈からの造影所見の例

 

参考:https://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMicm2113492

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