イントラリポス(脂肪製剤)を投与するべき理由
3大栄養素、糖質・アミノ酸・脂質において脂質が最もエネルギー効率がよい。
糖質は1g=4Kcal、アミノ酸も1g=4kCalだが、脂質は1g=9kCalもある。
また、静脈栄養施行時には、非タンパクカロリーを糖質のみにすると、糖質の過剰投与となり脂肪肝やTPN関連肝障害の原因となることがあるので、予防のためにも脂質の投与は必要。
(が、日本においてはTPNでさえ脂肪製剤を投与しない割合は30%もあるらしい)
【投与すべき理由】
その1、必須脂肪酸の供給
脂肪乳剤は長期間絶食となる患者においてリノール酸やアルファリノレン酸などの必須脂肪酸の欠乏を防ぐためにも重要。(2週間絶食で必須脂肪酸は欠乏する)
その2、効率的なエネルギー供給
NPC/N比率が低くなるPPN製剤においては脂肪製剤の投与で比率を適正化してタンパク質合成を効率よく働かせることができる。
*NPC/N比率とは非タンパクカロリー/窒素比のことで、これらは投与されたアミノ酸以外の栄養素(糖質+脂肪)から計算されるエネルギー量を投与アミノ酸に含まれる窒素量で割った比率である。アミノ酸は十分なエネルギー投与がなければ、いくら投与してもエネルギー源として消費されてしまい、タンパク質が合成されない。アミノ酸が有効にタンパク合成に使われるために必要な指標として必要エネルギーに対してどのくらいの窒素を最低投与しなければならないかを表すものであり、NPC/N比率は150〜200程度が最もタンパク質合成効率が高いということがわかっている。)
その3、脂肪肝の予防
脂質が不足するとアポリポタンパクが作られなくなる。アポリポタンパクは脂質を輸送するタンパクであるが、これがないと肝臓から脂質が運び出せなくなる。
肝臓ではコレステロールを作る工場であるので、アポリポタンパクが不足すると肝臓で作られた脂質がどんどんそのまま肝臓に蓄積して脂肪肝になってしまうのである。(もちろんアポリポタンパクはタンパクでもあるのでアミノ酸の投与も十分に行わないと脂肪肝は防げない。)
その4:静脈炎の予防
ビーフリードなどを末梢点滴から投与する場合、浸透圧が高く静脈炎を引き起こす可能性が報告されている。が、イントラリポスを同時に投与すると浸透圧を下げることによって静脈炎の予防となるので、ビーフリード投与時は禁忌出ない限り併用を検討する。
投与速度の注意点:
1日の投与量は体重1kgあたり2.5gまで。(体重50kgなら100gまで)。
100g投与すれば900kcalにもなる。
また、経静脈投与速度の上限はトリグリセライド換算で0.1g/kg/時以下(添付文書では「3時間以上かけて」と記載があるが投与速度が早すぎると代謝されずに過剰な脂肪粒子が血中に停滞してしまう可能性があるから0.1g/kg/h以下を目標に投与する。一方で、投与速度が遅すぎると感染が問題になるので極端にゆっくり投与しない)
よって体重50kgの人であれば1時間5gまでなので、イントラリポス20%100mlを点滴静注するのであれば4時間以上かける必要がある。
☆かつては、脂肪乳剤の投与ルートはTPN輸液との混合で脂肪粒子径が大きくなり肺塞栓の危険があるため単独ルートでの投与が推奨されていたが、最近TPN輸液ラインの側管から脂肪製剤の投与を行っても両者の接触する時間が短いため粗大粒子は増えないことがわかっている。
★ビーフリードとイントラリポスの併用はできる。例としては:ビーフリードをメインの点滴として、イントラリポスを側管から投与する。ごく僅かに混合されるが、これは問題にならない。大塚製薬に確認済み
注意:TPNを0.22μmのフィルターを介して入れている場合は、イントラリポスは大きさ的に通過しないのでフィルターの下流(患者側)の側管から投与する。
注意:
添付文書の禁忌事項では:重篤な肝障害・血液凝固障害、ケトーシスを伴った糖尿病、血栓症、高脂血症と書いてある。
*肝機能異常に関しては非代償性肝硬変および急性肝不全以外では投与された脂肪は分解され遊離脂肪酸は肝臓での利用が確認され、肝障害の有意な増加は見られなかったとの報告あり。
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