(文献)長時間型ループ利尿薬アゾセミドはフロセミドより優れている

(一言)長時間型ループ利尿薬アゾセミドはフロセミドより慢性心不全の長期管理としては優れている。アゾセミドだと長期的な死亡率や再入院率が低下する。フロセミドだと短時間作用だからか循環動態への影響が大きくRAS系の活性化や交感神経活性化を引き起こしてしまい長期的には良くないと考えられる。

 

 

古いけど大事な文献より覚書

✅心不全ガイドラインでは利尿剤に優先してβブロッカーやACE/ARBを用いるように明確に記載しているにも関わらず、どんなコホート研究でも利尿剤のほうがACE/ARB、βブロッカーよりも多く用いられている(それだけ心不全治療に必要不可欠な薬)。

・JCARE-CARDスタディでは高齢心不全患者の退院時における利尿剤処方は長期フォローにおける総死亡の独立した予後不良因子であることを明らかにしている。

・しかし長時間作用型の利尿剤アゾセミドは従来の短時間型のフロセミドに比べて心不全患者の予後を良くする可能性がある。

 

✅本研究の目的は短時間作用型ループ利尿薬のフロセミドと長時間作用型のアゾセミドの治療効果を比較することである。

・多施設研究・前向き・ランダム化比較化試験・オープンラベル試験である。

・心不全のNYHA分類2−3患者320人を比較し、最低2年間フォロー。プライマリーエンドポイントは心臓血管死と心不全による予期せぬ入院の複合ポイントであり、アゾセミドが優位に低かった。セカンダリーエンドポイントは心不全による予期せぬ入院と心不全治療に対する治療薬の追加などの必要が生じる事態であるが、これもアゾセミドが優位に低かった。

 

・アゾセミドがフロセミドよりも予後が良い理由は十分にわかっていない。

・ある報告では頻脈誘発性の心不全モデルにおいてはフロセミドによる左室機能不全が悪化するのは血漿アルドステロン濃度上昇と関連があることを示している。

・短時間型のフロセミドによって神経液性因子(RAS系や交感神経系)が活性化されているのが心不全治療で予後の改善が良くない理由の説明になるかもしれない。

・一方、アゾセミドはラットの心不全モデルでは交感神経を活性化させることなく利尿作用を発揮した

・また電解質異常や代謝異常も心不全の予後に何かしらの悪い影響を及ぼしていると考えられる。低カリウム血症はフロセミドでもアゾセミドでも差がなかったが、その他の低ナトリウム血症やクロライド、カルシウム、マグネシウム異常などはもしかしたら差が出るかもしれない。

・別の研究ではトラセミド(ルプラック®など)もフロセミドよりも優位であることを示すデータもでている。トラセミドは利尿剤であると同時にアルドステロン受容体に結合することでアルドステロン拮抗薬としての作用も併せ持つ。トラセミドの予後がフロセミドよりよいのは作用時間が長いからか抗アルドステロン作用があるからかはわからない

・アゾセミドの方がトラセミドよりも半減期が長く、また効果の持続時間も長いため現時点でループ利尿薬の第一選択として考えられる。

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