腹痛の原因と鑑別

腹痛の原因と鑑別

自分の勉強用にメモりましたが参考までにどうぞ。

少しずつアップグレードさせていく予定です。。

ポイント1:バイタルの確認
収縮期血圧より脈拍が高ければショックを念頭に入れる。
(ショック指数についてはショック指数とは何か – とある医学生の雑記帳参照)

腹痛でショックを引き起こしている原因としては腹部大動脈破裂、腸閉塞、腹腔内出血など容量減少性ショックが多い。月経のある女性では子宮外妊娠、黄体出血、卵巣出血の可能性も忘れない。

一覧にすると、次の可能性を考えたい。

・腹膜炎
・子宮外妊娠
・黄体出血
・卵巣出血
・腹腔内出血
・卵巣軸捻転

・子宮外妊娠
受精卵が子宮腔外に着床する疾患。好発はもちろん妊娠可能な女子で、下腹部痛に加えて無月経、性器出血がみとめられる。検査としてはhCG測定で妊娠を確認し、経膣超音波で胎嚢が子宮外に認められることで診断できる。

ポイント2、病歴の確認
鑑別診断でしばしば用いられる方法にOPQRSTという方法がある。


O:onset(発症様式)
P:Palliative/ Provocative(増悪因子、寛解因子)
Q:Quality/Quantity(症状の性質・強さ)
R:region/radiation(場所・放散の有無)
S:associated symptom(随伴症状)
T:time course(時間経過)

患者に問診する際はこれらは忘れずに聞きたい。

突然発症する場合→

・大動脈解離
・急性心筋梗塞
・腸間膜動脈閉塞

を考えたい。

それぞれのポイントを整理しておくと…

[大動脈解離]
原因:動脈硬化、高血圧、マルファン症候群など
好発:50ー70代男性
症状:
突然の激しい腹痛、背部痛。痛みは発症時がもっとも強く、背中から腰の方に移動していく患者が多い。ほかの症状として、ショック、心筋梗塞、腎梗塞、腸管虚血、対麻痺、大動脈弁閉鎖不全症を引き起こしうる。
検査:X線:縦郭陰影の拡大
造影CT:解離した大動脈の横断像
エコー:解離フラップの検出
MRI:時間かかるので推奨されない
血液検査:Dダイマー上昇

[心筋梗塞]
症状:突是炎の前胸部痛。締め付けられるような激しい痛みが30分以上。背中、左肩、顎などに放散する痛みも特徴的。
そのほか、呼吸困難、腹痛、吐き気なども催すことがある。
検査
心エコー:心筋壁の運動が限局性に傷害されているのを認める
心電図:ST上昇、T波の増高、異常Q波
血液検査:トロポニンTやCK−MBなどのマーカーが有用

[腸間膜動脈閉塞]
心房細動や心筋梗塞などの経過中に発症することが多い。腸間膜動脈の血栓塞栓による腸管壊死。
症状:激しい腹痛が起こるが、腹部の他覚所見に乏しいのが特徴。
検査:腹部造影CTで閉塞部位の確認。
腹部単純X線:ニボーを伴うイレウス像。

・慢性経過の腹痛で想起するべき疾患

・炎症性腸疾患
・腸管癒着症
・過敏性腸症候群
・薬剤性腸炎
・子宮内膜症
・慢性膵炎
・悪性腫瘍

それぞれについて…

[炎症性腸疾患]
クローン病や潰瘍性大腸炎など

[腸管癒着症]
腸が癒着することで腹痛や腹部違和感などが現れる。手術のあとに起こりやすい。突然悪化したら腸閉塞を考える。

[過敏性腸症候群]
腹痛、下痢、便利などの腹部症状があるものの器質的病変が腸管にみられないもの。ストレスや性格が主な発症因子として考えられている。検査としては除外診断が基本であり、炎症所見を認めず、内視鏡検査でも異常を認めない場合に本疾患を考える。思春期の女性に好発。

[薬剤性腸炎]
たとえば偽膜性腸炎などが代表的。抗菌薬によって菌交代現象が起こり、C.difficileが増殖し、毒素を産生することで腸の粘膜に傷害を与える。

[子宮内膜症]
本来子宮にできる子宮内膜が卵巣、直腸、膣など子宮以外にできる疾患。子宮以外にできた子宮内膜も本来の子宮の周期と同じ様な変化を起こし、月経期に剥離・出血を起こす。全く症状のない人から急性腹症を起こして緊急手術が必要な人まで症状は様々。

[慢性膵炎]
長期間にわたり膵臓に炎症を繰り返すことで、不可逆的な変化が膵臓に生じたもの。成人男性がアルコールが原因として代表的。症状としては、持続・断続する腹痛と圧痛が代表的。

[悪性腫瘍]
悪性腫瘍でも腹痛を生じうる。

ポイント3:部位による鑑別
圧痛点でどこに臓器障害があるかを絞り込む。

右悸肋部痛(右上腹部痛):

胆石症、胆管炎、肝炎、横隔膜下膿瘍、肝周囲炎(Fitz-Hugh-Curtis)

肝周囲炎(Fitz-Hugh-Curtis)
肝臓の皮膜に病原体が感染して発熱や腹痛を訴える。病態としては、産道から卵管を通して腹腔内にクラミジアなどの病原体が侵入し、肝臓皮膜に到達して刺激を与えることによる。基本的には他の疾患の除外診断の後に診断される。クラミジア抗体による検査も可能。

左季肋部痛(左上腹部痛):

胃炎、胃潰瘍、膵炎、脾膿瘍・梗塞

下腹部痛:

膀胱炎、虫垂炎、憩室炎、卵管炎、鼠径ヘルニア、尿路結石

背側部痛:腎盂腎炎

腎盂腎炎:
腎盂・尿細管を含めた腎間質に生じる感染症。膀胱炎に続いて起こる上行性感染であることが多い。原因菌としては大腸菌が代表的。リスクファクターとしては、結石や膀胱尿管逆流現象、神経因性膀胱など尿路の通過が傷害される疾患。それに加えて尿道カテーテル留置や妊娠そして痛風も原因となりうる。

腹部全体の痛み:

腸閉塞、腹膜炎、胃腸炎、アレルギ—性紫斑病

・アレルギ—性紫斑病(schonlein-Henoch紫斑病)
全身性のアレルギ—性血管炎により毛細血管の透過性が亢進し、紫斑や血管浮腫などの皮膚症状が起こる疾患。それに加えて腹痛、関節痛も起こる。上気道感染の1〜3週間後に、四肢伸側に左右対称に紫斑が出現することが多い。好発は小児の男子。

神経支配に一致している:帯状疱疹

・帯状疱疹は受診時には腹痛のみで、後から急に皮疹が出てくることも少なくない。

ポイント4,部位がはっきりしない腹痛


・中毒、アレルギー
・糖尿病ケトアシドーシス
・ポルフィリン中毒
・副腎不全
を考える必要がある。

[糖尿病ケトアシドーシス]
インスリンの作用不足により高血糖+ケトン体の蓄積が起こり、アシドーシスを生じるという病態。高血糖により脱水症状、アシドーシスにより嘔吐、腹痛などを生じる。糖尿病ケトアシドーシスによる腹痛はしばしば急性腹症と誤診される。
検査値としては血糖値の上昇、ケトン体の上昇、動脈血pHの低下、ナトリウムの低下、アニオンギャップ上昇、BUN上昇などに注目する。

[急性間欠性ポルフィリン症]
遺伝的素因のある人に薬剤や女性ホルモン、ストレスなどの誘因が加わることでポルフォビリノーゲンやアミノレブリン酸が蓄積し、腹部症状、精神・神経症状などが出現する。腹痛が代表的であるが他にも四肢麻痺などの末梢神経障害も呈する。誤診により治療が遅れると致命的になりうるので、腹痛患者をみたときにポルフィリン症を必ず鑑別の一つにあげなければならない。検査として尿中のALA↑、尿中PBG↑、ポルフィリン尿、尿のWatson-Schwartz反応陽性などが重要である。

また追記します。

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