ウェルニッケ脳症を疑ったら

ウェルニッケ脳症の定義

チアミン(ビタミンB1)欠乏による脳症。眼球運動障害・意識障害・失調を主徴とする。

3徴候すべて揃うことは少ない。

原因

アルコールの摂取歴が大事。アルコール多飲が代表的だが、アルコール無しで発症することもあるので注意。

症状:

通常は失調が先行し、その後に精神症状や眼球運動障害が続発する。

失調は体幹失調が目立ち、起立や歩行が困難になる。

四肢の失調は目立たず、膝かかと試験などを行って初めて確認されることが多い。

意識障害としては、意識レベル低下だけでなく、注意欠陥、周囲への無関心、混乱など意識変容が主体であることが多い。

眼球運動障害としては水平性や垂直性の眼振が多く、注視によって誘発される。

瞳孔の異常は進行例でのみ認められるが、縮瞳となり対光反射は減弱する。

多発ニューロパチーを伴うことが多く、重症例では昏睡、低体温、低血圧を呈する。

*アルコール性ニューロパチー:

ビタミンB1欠乏ではウェルニッケ脳症の他に、脚気(ニューロパチー)、心不全も引き起こしうる。

また、エタノールやアセトアルデヒドなどの代謝産物によって神経に直接障害を引き起こし、純粋なアルコール性ニューロパチーが引き起こされる。

ニューロパチーは下肢優位の多発ニューロパチー型の障害分布を呈する。急速に筋力低下が起こりギラン・バレー症候群と疑われる症例もあり、経過は多様である。検査としては、末梢神経伝導検査での下肢優位の軸索障害性ニューロパチーの所見をテウする。

検査:

・血中ビタミンB1:ビタミンB1を投与する前に測定する。ビタミンB1が低下してなくてもウェルニッケ脳症をきたすこともあるので注意。

・頭部MRIでは典型的には両側対称性に、視床内側・乳頭体・視蓋、中脳水道周囲に可逆性浮腫を認める。

治療:

・早期治療で完全に回復しうるが、初期治療が不十分の場合は死亡率は20%に達する。

・ウェルニッケ脳症の可能性を考えたら全例入院の上で加療する。

・治療はビタミンB1の大量投与。500mg*3回/dayを経静脈的投与を行う。

・ブドウ糖負荷でビタミンB1欠乏が増悪するので、アルコール依存でビタミンB1欠乏を想定するときはブドウ糖よりも必ずビタミンB1を先に投与する。

・ビタミンB1の半減期は96分程度と言われており、1日3回の点滴が望ましい。

・ビタミンB1自体は安全であるがアレルギー発症のリスクが有るため、投与中は慎重に経過を見る。

急速大量投与でアナフィラキシー様ショックになることがある(ビタミンB1ショック)

・症状が改善したら内服に移行。リスクがなくなるまでは100mgを経口投与する。

また追記予定です。

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