中枢性めまいを身体所見で診断する方法:HINTS
めまいを主訴に来院した患者でいちばん重要なのは脳血管障害などの中枢性めまいなのかBPPVなどの末梢性めまいなのかを鑑別すること。ERでは頭部CTをルーチンで取られることも多いが、急性期の脳梗塞はCTではっきりとわからないことも多い。
そこで大事なのはHINTS
HINTSとは…
head impulse test
direction-changing nystagmus
test of skew deviation
の3つの身体所見を組み合わせたものであり、脳梗塞に対して1つでも陽性なら感度100%、特異度96%であり、MRIよりも感度が高くなる。(Stroke,2009)
別のエントリーでもちょくちょく紹介してますが再度まとめ直しました。
◯head impulse testの方法
head impulse testとは何か(+動画) – とある研修医の雑記帳
・患者に前方(医師の鼻先など)を凝視してもらう。
・鼻を眼で見続けながら、頭を左(もしくは右)に20度程すばやく振ってもらう
・健常者では顔が動いても眼で標的(鼻)を見続けることが出来る。
・前庭眼反射障害のある患者では顔を動かすと目も顔を動かした側を見てしまい、視線がずれる。そして少し遅れて視線が検者の鼻に戻る。
・続いて反対側でも同様のテストを行う(先程左なら次は右)。
動画の解説
患者の顔を右に傾ける→目線は前を凝視し続けている(=HIT陰性)
続いて患者の顔を左に傾ける→目線は一度外れてからまた前を向く(=HIT陽性)
よって左の前庭神経障害を示唆
◯direction-changing nystagmus(注視方向交代性眼振)の方法
ペンライトの先などを目の前に出して、患者から50cmほど離れた距離でペンライトを正中視から上下左右に動かし目で追ってもらう(この時患者の顔が動かないように頭を軽く押さえる)。この時、虹彩で眼球結膜が隠れるぐらいまで目を外転させた状態で眼振を観察する。虹彩で眼球結膜が隠れる位置を超えて眼を外転させると健常人でも眼振が出現しうる。
患者の目が右を注視している時に右向きの眼振が出現し、左を中止している時に左向きの眼振が出現すれば注視方向交代性の眼振という。
(眼振には一方向にすばやく動く急速相とゆっくり動く緩徐相があるが、注視した方向に対して急速相をもつ眼振を注視方向交代性眼振という。)
◯test of skew deviationの方法
・患者に前方を見てもらう。
・両眼前50cmの位置で正面から患者の両目に向けてペンライトを照らす。
・正常では眼球が正常位にあり、ペンライト照射すると瞳孔の中に光が反射する。しかし梗塞などによって脳幹障害があれば両目の視軸が垂直方向にずれるため、ペンライトの光の反射が瞳孔の中心からずれることになる。
・例えば左脳幹に梗塞が起きると、右目が上に、左目が下にずれる。この状況で右目を手などで隠すと左目はゆっくり上転し、逆に左目を隠すと右目はゆっくり下転じる(→test of skew deviation陽性)
→test of skew deviationとは何か – とある研修医の雑記帳
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【まとめ】
・head impulse test陰性(少し遅れて鼻を凝視する)
・注視方向交代性眼振が陰性
・test of skewも陰性
なら脳梗塞は自信を持って除外できる。
MRIでは脳梗塞発症後24時間時点での偽陰性率は5.8%、後方循環系脳梗塞(椎骨動脈や脳底動脈、後大脳動脈の梗塞)では31%という報告もあり、脳梗塞を除外するためならHINTSはMRIよりも有用である。が、最も身体所見は正確に取れなければならないので日頃から繰り返して見慣れておくことが必要である。
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