救急外来でまず何の輸液を選択するか
◯病態もはっきりしないのまま輸液をつなぐことになる救急外来
救急外来では患者の病名も病態もはっきりとしない段階で輸液しなければならないことも少なくない。が、明らかに有害であることを示す所見がない限り、循環血漿量が相対的に減少していると想定して細胞外液輸液を開始する。もちろん輸液を開始するとともに、速やかな病態把握が重要であるが、500mlの細胞外液を輸液して不可逆的なダメージが発生する可能性は非常に低く、多くの場合無難な選択肢となる。
◯循環血漿量が低下している細胞外脱水ではNa量が少なくなっている
脱水には循環血液量が減少している細胞外脱水(hypovolemia)と細胞内脱水があるが、急性期に関しては細胞外脱水の方が優先される。細胞外脱水とはつまり細胞外液量が少ないということ。細胞外液量を規定しているのはNa量(Na濃度ではない)であり、Na量が多ければ浸透圧で水を引っ張ってくることになる。Na量が多ければ細胞外液量は増えて浮腫などの症状を呈するし、Na量が少なければ細胞外液量は減少して脱水となる。
◯つまり、とりあえずはNa量の多い輸液製剤を選択すれば良い
細胞外脱水の補正には細胞外液である生理食塩水や乳酸リンゲル液、酢酸リンゲル液などが用いられる。これらには細胞外液を増やしてくれるNaが多く含まれている。ただ、生理食塩水は高Cl性代謝性アシドーシスをきたしやすいために、高Kや高Caなどが疑われる状況でなければ乳酸リンゲル液、酢酸リンゲル液を用いる。これらはどちらでも大きな差がないと言われている。なお、リンゲル液ではカリウムは4.0mEq/L程度含まれるが、よほどの腎不全が無い限り、Kを投与して高カリウム血症になることは稀。
◯開始液(1号液)を使うのではないのか?
開始液にはKが含まれていないので、まずERでは開始液を使用すると言われることもあるが透析患者などで腎機能障害が自明でない限り、初期の輸液の段階から気にすることではない。むしろ明らかに循環血漿量が減少している状態においてはNa濃度が90mEq/Lしかない開始液用いるべきではない。
また、開始液(1号液)には多くの場合2.5%程度のブドウ糖が含まれているのも問題である。救急外来を受診するような急性期の患者においては侵襲によって高血糖が引き起こされていることが多いので開始液を急速輸液することによって高血糖が増悪することがある。特に脳卒中や蘇生後脳症など中枢神経障害においては高血糖は障害を助長すると言われており開始液は用いるべきではない。
◯いつまで細胞外液輸液をすればよいか
ストレスの大きな急性期では生体反応によって血管透過性が亢進し、血漿成分が血管外に濾出し、サードスペースを形成。つまり細胞外液量が減少することになるので、酢酸リンゲル液などの細胞外液を輸液して補正する必要があった。
加わった侵襲の大きさにより血管透過性の程度は大きく変化するが、よほどの重症でない限り血管透過性は数日で徐々に改善してくる。
細胞外脱水の指標としてはIVC径が有用である。こまめにエコーでIVC径や呼吸性変動の有無を見ることによって血管内ボリュームの評価を行いながら投与量を調節する。細胞外脱水がある程度改善されたと判断されれば、細胞外液輸液を中止し、維持輸液に切り替える。
更新中。また追記します。。
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