生理食塩水大量輸液がしにくい理由
◯救急外来ではとりあえず細胞外液が投与されることが多い
救急外来などで点滴をつなぐ場合は、”とりあえず”細胞外液である生理食塩水や酢酸リンゲル液、乳酸リンゲル液が投与されることが多い。これらは細胞外液量が減っている場合脱水の補正が期待されるからである。
細胞外液は生理食塩水→リンゲル液→乳酸リンゲル液・酢酸リンゲル液と改良されてきた。下の表は細胞外液の組成の違いを表している図であるが、生理食塩水はNaとClイオンだけで血漿と等張にしているがNaとClの濃度が高過ぎる。そこで、リンゲル液ではNaを減らして、Caを加えている。それでもCl-が多すぎるため緩衝材として乳酸リンゲル液のように乳酸を加えたり、酢酸リンゲル液のように酢酸を加えるなどしてClを減らして血漿に近づけている。なお、本来血漿にはHCO3-が含まれているが、これを輸液製剤に加えてしまうとCaと結晶を形成してしまうためにHCO3-以外の陰イオンである乳酸、酢酸が使われている。
◯生理食塩水の問題点はCl-が多すぎるという点
生理食塩水は乳酸リンゲル液や酢酸リンゲル液に比べてCL-が多いために生理食塩水大量投与を行うと高Cl-性代謝性アシドーシス(希釈性アシドーシス)を起こしてしまう可能性がある。重炭酸や酢酸、乳酸などの緩衝液の入っていない生理食塩水の大量輸液は血液中のHCO3-を希釈してしまい希釈性アシドーシスを引き起こしてしまうことが有る(軽度のことが多い)。
ご存知の通りHCO3-はpHを適正に保つために大事な役割を果たしているが、生理食塩水には全く含まれていないため、大量投与により相対的に血液中のHCO3-が低下することによって血液は酸性に傾いてしまう。
逆に酢酸リンゲル液や乳酸リンゲル液は体内で代謝されてHCO3-になるためアシドーシスを予防することが出来る。
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