(文献)利尿剤が多いほど心不全患者の予後は悪くなる

(一言で)ループ利尿剤が多いほど心不全患者の予後は悪くなる。ループ利尿薬はRASS系や交感神経系を亢進させてしまうから。低用量ループ利尿薬であればRASS阻害薬の組み合わせが大変効果的である。

 

 

論文からのメモ書き

・慢性心不全患者の治療でループ利尿薬にレニンアンギオテンシンアルドステロン系(RASS)阻害薬やβブロッカーを追加することで予後が良くなるかどうかはこれまではっきりしていなかった。

・現行のガイドラインでは症状のある心不全ではループ利尿薬の使用はクラス1で推奨されている。(HFpEFでもHFrEFでも)

・しかしループ利尿薬はRASSや交感神経系を活性化させてしまい、その結果心不全を悪化させる可能性があることが知られている。

・フロセミドが心不全患者の予後を悪くするのにはいくつかのメカニズムがある。1つはフロセミドはRASS系や交感神経系を活性化させて、その結果心不全を悪くするから。2つ目に、フロセミドは腎機能の低下や電解質異常を引き起こすから。3つ目はフロセミドは左室機能不全を悪化させて心臓の線維化を引き起こし、血清アルドステロン値を上昇させてカルシウム調節を狂わせてしまう。

ループ利尿薬がRASSや交感神経系を亢進させてしまうと考えるならば、ACEIやARB、MRAの使用が心不全患者にメリットになりそうである

・少量ループ利尿薬+ACEI/ARB,MRA,βブロッカーは予後良くなったが、高用量ループ利尿薬+ACEI/ARB,MRA,βブロッカーは予後が悪くなった。

・特にEF50%以下の患者だとACEI/ARB,MRA,βブロッカー処方されていると予後がかなり良くなっている(利尿剤の有無を問わず)。逆にEF50%以上だとACEI/ARB,MRA,βブロッカー処方されても予後変わらず(利尿剤の有無を問わず)。

心不全患者ではループ利尿薬の量に依存して予後は明らかに悪くなる。一方、RASS阻害薬やβブロッカーは予後の改善と関係があり、特に低用量のループ利尿薬が低腎機能患者やEF低値患者に使われているときはなおさらである

・心不全でループ利尿薬をの用いるときはACEI/ARB,MRA,βブロッカーのルーチンでの使用が重要とも言える結果である。

RASS阻害薬は複数使用+ループ利尿薬使用で予後が良くなるが、RASS系阻害薬の中途半端な単剤使用はアンギオテンシンやアルドステロン受容体の活性化を起こして逆にRASSの構成因子を刺激してしまいうる。なので、心不全を悪化させないためにはRASS阻害薬たちとβブロッカーとループ利尿薬の併用が重要である。

・心不全患者では心拍出量の低下に伴って腎血流も減少するが、RASSの活性化に伴って腎血流は維持される。したがって、高用量ループ利尿薬と過剰なRASS阻害薬の組み合わせは腎機能の低下している心不全患者にとっては心臓と腎臓とでの悪循環の治療とも言える。

・バソプレシンV2受容体阻害薬のトルバプタンも使われてきているが、これは集合管に作用し、水の吸収を抑えることで利尿作用をもたらす。したがって、これは腎血流やRASS系に影響しない。いくつかの研究ではトルバプタンとフロセミドの併用が腎機能にとって効果的であったと報告している。したがってトルバプタンは心不全患者の中でもeGFRが低くて高用量ループ利尿薬を使わざるを得ない人に効果的かもしれない。

 

参考文献

https://www.jstage.jst.go.jp/article/circj/advpub/0/advpub_CJ-16-0216/_article/-char/ja/

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