バンコマイシンはいつ使うか

【バンコマイシンとは】

・バンコマイシンは糖ポリペプチドでグリコペプチド系抗菌薬に用いられる。

・スペクトラムとしてはほとんど全てののグラム陽性菌(球菌、桿菌)に有効であり、殺菌的に働く。黄色ブドウ球菌に対して1958年から用いられるようになったが、実はペニシリンが開発される前から使われていたという。

・ペニシリン、セフェム系が台頭してきてからはバンコマイシンの出番はほとんどなくなったが、βラクタム系が全く効かないメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)が出てきてから抗MRSA薬として再度使われるようになる。

・βラクタム系に感受性のあるMSSAであればバンコマイシンを使う理由はなく、セファゾリンのようなβラクタム系が治療の中心になるが、βラクタムアレルギーがある患者であればグラム陽性菌感染症治療にバンコマイシンが使われうる。ちなみに殺菌能力はβラクタムの方がバンコマイシンよりも格上。

◯バンコマイシンの使用が適切であり許容される状況

・βラクタム耐性グラム陽性球菌による重症感染症の治療。(ただし、バンコマイシンはβラクタム剤より殺菌効果が遅延する可能性がある)

・βラクタム剤に重症アレルギーのある患者にグラム陽性菌感染症の治療を行う場合

・CD腸炎にメトロニダゾールが反応しない場合、もしくは致死的な場合

・心内膜炎の危険性が高い患者に対する予防投与

・MRSAやメチシリン耐性表皮ブドウ球菌に対する感染率が高い施設で、人工物や装置を移植する心臓血管系の手術や人工骨頭置換術などの外科手術に対する予防投与(手術直前にバンコマイシン1回投与し、手術が6時間以上持続する場合には追加。ただし予防投与は最高2回以内に留めるべきである)

◯バンコマイシンの使用を控えるべき状況

・コアグラーゼ陰性ブドウ球菌が血培1セットから検出され、他の1セットが陰性である場合=コンタミが疑われる場合。

・βラクタム剤耐性のグラム陽性菌が培養で検出されなかった患者に対する継続的な経験的治療

・バンコマイシン溶液を局所や洗浄に用いる

など

(出典:レジデントのための感染症診療マニュアル)

・その他、clostridium difficileの治療として経口バンコマイシンが用いられる。clostridiumは抗菌薬使用後などに、菌交代現象で出現し、偽膜性大腸炎の原因菌となる。経口でバンコマイシンを投与しても、分子量が大きいため消化管からほとんど吸収されないために腸管内のバンコマイシン濃度が非常に高くなる。腸管内にいるclostridium difficileをターゲットとする時はそのことが幸いしてより効率的に殺菌することができる。(逆に点滴でバンコマイシンを投与しても腸管にいるclostridium difficileは叩けない)。が、基本的にはメトロニダゾールを先に使用し、奏効しない場合のみバンコマイシンを使用する。

また追記します…。

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