横紋筋融解症とは骨格筋の破壊によって筋肉成分が血管に流出することによりミオグロビンによる腎障害や電解質異常が起こる病態。
◯横紋筋融解症の原因
・直接的な筋障害(外傷、クラッシュ症候群、過度な運動、痙攣、熱中症、脱水)
・薬剤性(スタチン、フィブラート、ダプトマイシン、漢方、アルコール離脱、コカインなど)
・感染症(皮膚軟部組織感染症、敗血症、レジオネラ、EBV,CMVなど)
・電解質異常(低カルシウム血症、低カリウム血症、低リン酸血症)
◯横紋筋融解症の診断基準(byICU実践ハンドブック)
・CK(CPK)が基準値の10倍以上の上昇
・ミオグロビン尿の存在(夜間などでミオグロビン尿を検査できない場合は血清Cre上昇もしくは尿潜血陽性(褐色尿)も同義として扱う)
その他、P、K、ミオグロビン、アルドラーゼの上昇も参考になるとされている。
CKとミオグロビン尿の推移:ミオグロビン尿の方が先に出現し、その後CKの上昇が認められる。
◯具体的にどのぐらいから症状が出てくるのか
外傷患者などで採血をしてCKが1万ほどあるとびっくりしてしまうが、CKは容易に挙がるためそれだけではそこまで慌てる必要はない。
文献的にはCK>5000-6000IU/L以上で腎障害が出現しうるとされている。よってCK5000以上の時はAKI予防目的に輸液を行う。また、1回の採血ではCKが上昇過程の事もあるので必ずフォロー(ピークアウトの確認)の採血が必要。
*Am J Respir Crit Care Med. 2010;181(10):1128-1155 UpToDate® “Prevention and treatment of heme pigment-induced acute kidney injury (acute renal failure)”
◯治療
生理食塩水や外液の輸液(400ml/時)程度を行うことで尿量を保ち腎不全を防ぐのが基本的な方針。尿量は3ml/kg/時が目安。体重50kgなら一時間150ml。
筋破壊により血中カルシウムがキレートされて低カルシウム血症になることがあるので注意。CK<5000、尿潜血陰性を目標に輸液する。
◯軽症の場合
CKが5000未満で原因がはっきりしている(過度の運動後、打撲後など)場合でその他特に問題が無いようであれば外来フォローでも可能。飲水を促し、1,2日後に外来で再検する。ただし、来院時の血清CKの値は腎不全合併の指標としては役に立たないため、横紋筋融解を疑った場合は基本的には入院加療が望ましい。
また追記します。
参考文献
ER実践ハンドブック
ICU実践ハンドブック
UCSFに学ぶできる内科医への近道
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